雑誌『DRP ドクターズプラザ』に、調剤薬局部長小黒の新しい連載『小黒先生の薬の話Q&A』が始まりました。
新しい連載は、お薬についての素朴な疑問に、小黒が丁寧に回答する内容です。
今回は、第二回『〜薬の服用について〜』から記事の内容をご紹介します。
薬の服用時間
Q. 薬袋に「食後」「食前」「食間」など書いていますが、薬によって飲む時間が違うのはなぜでしょうか。
A.
薬は体の中に入ってから、吸収され、様々な部位に分布して効果を現し、分解された後、体外に排泄されます。お酒を思い浮かべると分かりやすいでしょう。お酒を飲むと吸収されて体中に運ばれ、顔が赤くなったり、気分が良くなったりしますが、時間とともに肝臓で分解されて、腎臓で尿とともに排出されます。薬は服用してから体外に排泄されるまでに一定の時間が必要で、それまで効果が持続しますが、薬によって吸収される速度や排泄されるまでの時間が異なるので、様々な服用方法があるのです。決められた時間を空けずに続けざまに薬を服用すれば、分布される薬の量が多すぎて副作用が出てしまいますし、時間を空けすぎれば、分解、排泄されて効果が持続しません。治療に必要な効果を持続させる為には、決められた時間に決められた量の薬を服用することが必要なのです。
食後の薬には、吸収や副作用防止の観点から食後でなくてはいけないものもありますし、「食後」というのが服用時間の目安になっているものもあります。食前のものは食事の影響を受けやすいものや、糖尿病薬や吐き気止め等、食事の際に効果を発揮させたいものに多い服用方法です。
よく勘違いされますが、食間というのは食事と食事の間、すなわち空腹時のことです。食事をしてから約2時間で胃の中の食べ物は消化されるので、食後2時間と言われることもあります。食事の影響を受けやすい薬剤や、空腹の方が吸収の良い薬剤の服用方法です。就寝前のものは睡眠導入剤や、眠気の副作用が起こるものが多く、服用後にふらついて転倒するのを防ぐ目的もあります。
このように薬が安全に、かつ最も有効に使われるようにする為に、様々な服用方法があるのです。用法を正確に理解して正しく服用しましょう。
薬の使用期限
Q. 風邪の症状があったので病院へ行こうと思いましたが、以前、風邪をひいた時に処方された薬が残っていました。 それで、その薬を服用しようと思いましたが、薬には、食べ物と同じように服用期限のようなものはあるのでしょうか。
A.
食べ物に賞味期限や消費期限があるように、薬にも使用期限があります。薬の使用期限はそれぞれの薬によって異なります。薬が皆様に手渡される以前の包装に記されており、錠剤は保管方法がよければ、包装に書かれている使用期限まで効果があると考えて良いでしょう。
散薬は表面積が広いので変質しやすく、一般的に錠剤よりも使用期限が短いのですが、吸湿や酸化などに配慮したアルミ製の被包で分包して製品化されているもの等は、錠剤同様に使用期限も比較的長くなっています。錠剤同様に包装にかかれている使用期限まで効果があるといえます。
その他の外用薬も同様ですが、食品と同じように開封されているかどうかということが重要です。錠剤の被包を外して一包化してあったり、薬局で分包されていたりする散剤はもとより、数種類の薬剤が薬局で混合調剤されている散剤、水薬、軟膏等は、配合変化にも注意が必要です。
また、点眼薬や点鼻、吸入等の外用薬は、使用時にご自身の粘膜に触れており、中の薬剤が汚染される可能性があるため、一定期間以上の再使用はお勧め出来ません。
医師による処方薬はその時々の症状にあったものが選択されています。以前のものを服用するときには、使用期限だけでなく、今回の症状にあっているか、薬剤師に相談しましょう。
DRP Information for Pure Life May 2012 より引用